同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
みちると話したのはそれ一度きり。
そしてその日を境にしたかのように、みちるをあまり大学で見かけなくなった。
たまに見かけたかと思うと彼氏と喧嘩しているか、ひとりで悲しそうにしているか……とにかく、彼女の恋はうまくいっていないように見えた。
しかしそれがわかったからと言って、彼を一途に想うみちるを自分のものにしようだなんて思えなかった。
俺にできることは、幸せになって欲しいと願うことくらい。
そのうちに本当に彼女は大学に現れなくなり、ふたりは別れたのだと悟った。
一度言葉を交わしただけだったけれど、みちるに投げつけられた岡山弁はときどき蘇って、俺の胸を疼かせた。
そんな時に、幼馴染の沙弓がはるばる神奈川からやってきて、告白されて。
沙弓に恋愛感情はなかったが、俺はもう女の子の悲しむ顔を見たくなかった。
だから、沙弓の告白を受け入れ、彼女と付き合うことにしたのだった。
……結局は、沙弓にも悲しい顔をさせてしまったのだけど。
* * *
「ねえ、私に話しかけてきたときの比留川くんって……髪は今の感じ? それとも、金髪?」
俺の思い出話を聞き終え、何か悩んでいたみちるが俺の頭のあたりを見ながら聞いてくる。
あの頃は、そうだな……まだ就活前だったし、黒くしていなかった気がする。
「たぶん、ふざけた金髪野郎だったと思うけど」
「……覚えてるかも。ちょっとだけ」
「ホントに?」
みちるは首を縦に振り、すまなそうに眉尻を下げる。