同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「きみは……相談室の……近藤さん、だったよね」
「は、はいっ! 私なんかの名前を覚えてくださっていて光栄です! じじ実は、お伺いしたいことが、ああありまして!」
小刻みに震える手で注がれたビールは、泡だらけになってコップからあふれる。
「八重ちゃん、こぼれてる!」
「す、すみません、部長!」
咄嗟に近くのテーブルにあったおしぼりをふたつ取り、ひとつを吉沢部長に渡し、もうひとつで畳にこぼれてしまったビールをふき取る。
「難波さん、ありがとう。……それで、近藤さん。なにか、大事な話?」
怒るどころかお礼の言葉をくれて、八重ちゃんの話に耳を傾けてくれる部長は、まったく神様みたいな上司だ。
だから、八重ちゃんもつい惹かれてしまったんだろうか。でも、きっと部長なら、うまく断ってくれるはずだよね……?
そんな私の心の内を知る由もない八重ちゃんは、ビールの瓶をテーブルに戻し、畳に正座をする。
なんだかこちらまで緊張してしまうほど改まった姿勢の彼女は、真っ赤に染まった顔を上げて口を開いた。
「か、霞社長のことなのですが……っ! あの、彼の、ここ好みの女性というのは、どういった、その、タイプなのか、ご存知でしょうか……!」
か、霞社長……?
飛び出した名前が意外過ぎて、私はぽかんと口を開ける。