同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「霞……? そっか。まだアイツを好いてくれる子がいるんだなぁ。さすがは“元王子”」
なぜだかしみじみと嬉しそうに呟いた吉沢さん。
そういえば、霞社長と吉沢部長、ついでに久我さんは同期だと聞いたことがある。てんでバラバラな雰囲気の三人だけど、こないだの会議での様子も併せて考えると、仲がいいんだろうな。
確か、飛びぬけて容姿端麗である社長は、私の入社する少し前まで“王子”と呼ばれていたんだっけ。
どうして“元”がつくようになってしまったのかは知らないけれど、確かに眩しいくらいカッコいい人だ。
でも、まさかそんな人を、引っ込み思案の八重ちゃんが……?
にわかには信じられなくて、まじまじと彼女の顔を見てしまう。
「……私。お恥ずかしながら、今まで二次元の男子にしか恋したことがなかったんです。でも、会社に入って社長を見かけたときに、初めて生身の男性にドキドキして……
もちろん、あんなすごい人とどうにかなれるだなんて思ってません。でも……そろそろ、“ダサイの化身”から卒業したいんです……彼に恋をすることで、自分を変えたい」
八重ちゃん……。
ああどうしよう、普段の彼女を知っているだけに、感動してしまう。
お酒の力を借りているとはいえ、きっと勇気を振り絞って話してくれたんだろう。
そういうことなら、全力で応援するよ私は!
彼女の後ろでひとり鼻息荒くしていると、私と同じように彼女の味方らしい吉沢さんも目を輝かせていた。
「いや、どうにかなるかもしれないよ。霞は超がつくほど面食いな奴なんだけどさ、きみってこの眼鏡外したらさ……」