同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
むう、と頬を膨らませると、迅はその場で腕組みをして真剣に悩み始めてしまった。
そ、そんなに困らせてるなら、もうちょっと抑えめのやつ選ぶけど……。
とりあえずビキニは近くの棚にキープして、ほかの水着も物色し始めること数分、迅がようやく腕を解いて顔を上げた。
「……わかった。いいよ、さっきの水着で」
「え、いいの? ありがとう。……でも、ホントに?」
もしも本当に迅が嫌なら、無理はしてほしくないけど……。
そんな思いで彼の顔をのぞき込むと、少し不機嫌そうな彼に言われる。
「その代わり、みちるは絶対に俺から離れないこと」
なんだ、そんな約束なら簡単だ。会社の皆と一緒とはいえ、迅と行く初めての旅行だもの。
言われなくたって、片時も離れるつもりはなかったよ。
無事に水着を購入し終えて店を出ると、周囲に店を構える飲食店からいい香りが漂ってきて、今度はおなかが空いてきた。
「どこかで何か食べて帰ろっか?」
隣を歩く迅に提案するけれど、彼は心ここにあらずという感じで、足元のアスファルトを見つめている。
「迅? どうしたの?」
「あー、ゴメン、聞いてなかった。何?」
「どこかでご飯食べない?」
「ああ、いいよ。……でもちょっと待って」