同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
不思議そうな比留川を残して、俺はバーを後にする。
午後の陽射しは次第に傾いてきて、夕暮れが迫っていた。
オレンジに染まる景色の中を早足で別荘に向かっていき、建物が見えてくると同時に俺は歩く速度を緩めた。
道路の向こう側にある別荘の前で、白い外壁にもたれて寂しそうにしている小梅を見つけたからだ。
左右から車が来ないことを確認して、彼女のもとへ走っていく。
俺の姿に気付いた小梅は今にも泣きそうな顔になって、俺が抱き寄せるより先にぎゅっと抱き着いてきた。
俺もその小さな背中に腕を回して、ぬくもりを確かめながら口を開く。
「……悪かった、ひとりにして」
「ううん。あたしの方こそごめんなさい……ひどいこと、言っちゃって」
そっと身体を離すと小梅は泣いていて、親指の腹でそれを拭ってやりながら笑いかける。
「いや……俺も、お前の感じてる不安とかそういうのをわかろうとしてなかったから」
「……それでも、ひどいこと言いました。あたし、あのあと実はたまたま廊下で会った柏木さんに久我さんと喧嘩したこと相談したんです。唯一の子持ち男性だし……そしたら」
「そしたら?」
なぜか言いにくそうに口ごもる小梅。柏木の奴、いったい何を言ったんだ。