同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「お前が構ってやらないから、だいぶ飲んだくれてたぞ」
比留川はばつが悪そうに俺に頭を下げ、それから難波の姿を瞳に映して静かに語った。
「俺、この旅行でみちるにどうしても伝えたいことがあって……そのことばかり考えてたら肝心の旅行を楽しむことができませんでした。そのせいで、みちるを不安にさせたみたいですね。……でも、ウィルに挑発されてやっと目が覚めました」
俺は比留川が難波に伝えようとしていることをなんとなく察して、“あれ”は確かに緊張するものだよな、なんて自分の時のことを思い返した。
相手の気持ちはわかっていても、応えてもらえるかどうか不安で、怖気づいてしまうんだよな。
でも、いざ想いを伝えて、泣くほど喜んでくれた小梅を見たとき、思ったんだ。
もうこの先ずっと、こいつに悲しい顔はさせたくない。どんなことからも俺がこの手で守ってやる。だから、いつも笑顔で傍にいてくれ――って。
……そう、笑顔で。なのに、今は。
俺は一度静かに目を閉じ、あの頃よりずっと愛しい相手のことを想った。
そして、瞼を開くと同時に比留川に告げる。
「……俺の方こそ目が覚めた。サンキュ」