同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「私、一年だけ管理課にいたことがあって、久我さんはそのときの上司だったの。面倒見のいい人だから、元部下の情けない姿見て放っておけなかったんじゃないかなぁ」
あの時の飴は仕事終わりにありがたく頂いて、その甘さと久我さんの優しさに疲れが癒されたっけ。
つい数日前の記憶に浸ってそんなことを考えていると、軟骨を飲み込んだらしい彼の顎の動きが止まり、私に短く問う。
「……それだけ?」
「え? ……うん。そういえば、直接お礼言うタイミングは逃しちゃったけど」
……なんでそんなこと聞くんだろう。
目を瞬かせて不思議そうにする私の耳に、比留川くんの大きなため息が聞こえた。
「……ゴメン。今の質問忘れて」
気まずそうに言われて、わけのわからないままコクンと頷いた。
……なんだか、会話が続かないな。
この騒がしい飲み会のなかで、私たちだけ浮いてる。
せっかくこうして隣にいるんだから、いろいろ話したいのに……。
「「……あのさ」」
微妙な空気を振り払うように声を上げると、同時に全く同じ三文字を発したらしい比留川くんの声とかぶった。
私たちはきょとんと目を丸くして、お互い見つめ合う。