同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


飲み会を抜け出すのは意外と簡単だった。

飲み過ぎた私を家まで送る、と吉沢部長に申し出る比留川くんは淡々としていたし、同期であるという関係性も手伝って、変に勘ぐられることもなかった。


「……どこで飲み直す? あんまりここから近いと会社のひとに会っちゃうかもしれないよね」


店を出て、夜の街を歩く私たち。

さっきまで熱気のこもった室内にいたから、ひんやりとした外気が心地いい。

ただ、比留川くんが隣を歩いていることを意識している体の右半分だけは、変に熱いのだけれど。


「家の近くの焼き鳥屋……たぶん、誰にも会わずに済むし、そこでいい?」

「うん、もちろん」

「じゃ、タクシー拾ってくる。待ってて」


それだけ言って車道の方へ近づく後ろ姿に、今なら気づかれないだろうと熱い視線を送る。

夜風になびく黒髪、広い肩幅、すらりと伸びた手足……ああダメだ、彼のどのパーツをとっても、世界で一番のイケメンに見える。

酔っているせいもあると思うけど、それだけじゃないような……。


「難波」


呼ばれて気づくと彼の前に一台のタクシーが止まっている。

慌てて駆け寄ると、比留川くんは私が乗るのを待ってから、同じ後部座席に乗り込んだ。


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