同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「……玄太(げんた)。今日、沙弓(さゆみ)は?」
「あー、今日はいないわ。アイツまだ就職決まってねーから、最近忙しいみたいで」
「……そっか」
このチャラいお兄さんは玄太さんというのか。でもそれより、沙弓って誰なんだろう。
その人がいないと聞いて、比留川くんが意気消沈しているような……。
「ちょいちょい迅、カノジョ困惑してる。“沙弓って誰なの!キーッ!”って顔してるって」
手元の焼き鳥をひっくり返しながら、玄太さんが白い歯を見せて笑う。
「い、いや私、決してそんな顔は……!」
気になったのは図星だけど!
カウンターの向こうの玄太さんに反論しようとすると、比留川くんが割って入る。
「あー、難波。この脂ぎった黒いのは、河田玄太。高校の同級生で、ここの店主」
「オイ、俺はゴキブリか! どーもー河田です。んで、沙弓っつーのは俺の妹だから心配しないでね」
またしても変な気を回す玄太さんに、私は極めて普通の挨拶を返す。
「……初めまして。難波みちるです」
「彼女、同じ会社の同期で……今日は、昇進祝い」
「え! そうなのみちるちゃん! すげー! うーん、確かにデキる女の雰囲気漂ってる」
……まったく、調子のいい人だ。
お世辞感丸出しの玄太さんに呆れつつ、私は説明を加える。