同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
玄太さんに向けていたのとは違う、優しい眼差しが私をとらえる。
「難波、昇進おめでとう」
わぁ、比留川くんに言ってもらえると、なんだかじーんとするなぁ。
同期の言葉は、上司に認められるのとはまた違う喜びがある。
私……今まで頑張ってきてよかった。
「そっちこそ、課長なんてすごいよ。さあ、今夜は飲もう飲もう!」
カチン、と控えめにジョッキを合わせて、私たちは乾杯をした。
さっき少し気になった比留川くんの過去の恋愛のことは一旦頭の隅に追いやって、とりあえず今夜を楽しもう。
そう決めた私は二杯目から日本酒に切り替えて、玄太さんの作る焼き鳥をつまみながら次々グラスを空にしていった。
比留川くんとの会話ももちろん楽しくて、彼の趣味はサーフィンで、玄太さんと予定を合わせてはよく波乗りに行くんだという話にキュンとしたり。
私のほうは、同じ課の後輩がなんと霞社長に恋をしていて、これからアプローチを仕掛けるらしいんだという身近なスキャンダルを教えてあげたりした。
比留川くんは口数は多い方じゃないけれど、聞いたらちゃんと答えてくれるし、私の話にも興味深そうに耳を傾けてくれて、うれしかった。
もっと、話して……お互いのこと、もっと知りたいし、知ってほしい。
そして、できることなら、私。
あなたと、本気の恋をしてみたい――。