同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
徐々に酔いがさめていく感覚がした。
だからって、ここで顔を上げたら気まずいことになりそうで、私は狸寝入りを決め込む。
どうせなら思考も閉じてしまいたいのに、それができない。
比留川くんが、いまだに吹っ切れていないという“あの子”と、私が似ている……。
だから、私はこうして彼の隣にいられるの……?
「お前、それは同じ男としてどーかと思うぞ。つまりみちるちゃんは“代わり”ってことだろ?」
……やっぱり、そういうことになるよね。
薄々気づいていたけれど、玄太さんという第三者にハッキリ言われるとグサッとくる。
比留川くんの返答によっては、さらに傷つく可能性が……。
ぎゅっと目を閉じ、はらはらしながら彼の声を待っていると。
「そうかもしれない……でも、初めてなんだ。たとえきっかけは“似てるから”だったとしても、あの子以外に心が揺れるのは」
……なにそれ。ずるい。
“あの子”と私が似てることを否定しないくせに、期待を持たせるようなこと言わないでよ。
喜んでいいのか、怒っていいのかわからない。
「……そっか。ちょっと気に入らねぇけど、みちるちゃんが“あの子”を超えてくれることを期待するしかねぇか」
「……そうだな」
カウンターに突っ伏したままの私の頭に、ふわりと温かい手が触れた。
ひ、比留川くんに、撫でられてる……?
一度大きく飛び上がった鼓動は、彼のぬくもりを感じるたびに耳の奥でドキドキとさわぐ。
……私は、ただの“代わり”かもしれないのに。