同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「もっと早く教えてよ! ど、どこなの! お風呂場は!」
「廊下出てすぐ見える左側の扉。タオルとか、あとで適当に置いておくから」
「ありがとう。ちなみに、今着るものもよろしく!」
「……昨夜すでに全部見たけど?」
意味深にそんなことを言ってくる彼に、全身の血液が沸騰しそうになる。
「なっ……! それとこれとは別です!」
忘れていたけど、昨夜の私は痴女だったんだっけ……。その時も、こんなに崩れた顔だったんだろうか。そうなんだろうな。
マスカラお化けに誘われたって……そりゃ、性欲も吹っ飛ぶよ。
自分の記憶にないのは幸いだったかも。
*
シャワーを借りて無事人間に戻ったあとは、比留川くんの用意してくれたぶかぶかのパーカーをワンピースのようにかぶった。
下着は洗濯と乾燥が済んでいて、比留川くんにやってもらったと思うとなんだかそれも恥ずかしいけれど、ありがたく身に着けてリビングを覗いた。
比留川くんの姿は見えないけれど、漂うコーヒーのいい香りに鼻をくすぐられ、誘われるようにして部屋の中に入る。
さっきの寝室と同じ、無垢板の床が足の裏に心地いい。
こちらのインテリアもやっぱりマリンテイストで、鮮やかな水色のソファや棚に飾られたヨットの模型、白とネイビーのストライプ柄カーテンが彼らしい。
リビングとつながっているダイニングでは、テーブルの上でふたつのマグカップが湯気を立てている。いい香りの出所はここか。
「……上がった? いちおう簡単なもの作ってみたけど、食欲あれば」
その時、背後のカウンターキッチンから出てきた比留川くんの声に振り向く。
彼の手には、おいしそうなトマト系パスタが盛り付けられた二枚のお皿が。