同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


「わー! 食べる! すごい、作ったの?」


二日酔いだったけど、急におなかすいてきた!

私は目を輝かせて比留川くんに話しかけるけれど、彼は返事もせずにぼうっとして私の顔を見ている。


「おーい、比留川くん?」


彼の目の前で手のひらを振ってみる。

それで我に返ったらしい彼は、「あ、ああ」と微妙な笑みを向け、ダイニングテーブルにお皿を置く。

どうしたんだろう?

テーブルに向かい合って座ったあとも、彼の視線が痛い。


「私の顔に何かついてる?」

「いや、そういうわけじゃないけど……メイク落とすと、印象が変わるなって」


……はっ。私ってば無防備にすっぴんを彼にさらしてしまった!

素顔が気に入っていないわけじゃないけど、田舎臭さを隠すにはメイクを盛るのが効果的だから、いつも結構バッチリメイクなんだよね。


「が、がっかりさせちゃった……かな」


比留川くんは正真正銘の都会者で、休日は波乗りを楽しむサーファー。

彼に似合うのは隙のない都会女子が、もしくは潮風に髪をなびかせる湘南美人だろう。

海と言ったら穏やかな瀬戸内海しか知らない私に、後者は無理だ。都会者を装うので精一杯。

それも結局“装っている”だけだから、こういうときにぼろが出ちゃうんだけどね……。


< 40 / 236 >

この作品をシェア

pagetop