同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「わー! 食べる! すごい、作ったの?」
二日酔いだったけど、急におなかすいてきた!
私は目を輝かせて比留川くんに話しかけるけれど、彼は返事もせずにぼうっとして私の顔を見ている。
「おーい、比留川くん?」
彼の目の前で手のひらを振ってみる。
それで我に返ったらしい彼は、「あ、ああ」と微妙な笑みを向け、ダイニングテーブルにお皿を置く。
どうしたんだろう?
テーブルに向かい合って座ったあとも、彼の視線が痛い。
「私の顔に何かついてる?」
「いや、そういうわけじゃないけど……メイク落とすと、印象が変わるなって」
……はっ。私ってば無防備にすっぴんを彼にさらしてしまった!
素顔が気に入っていないわけじゃないけど、田舎臭さを隠すにはメイクを盛るのが効果的だから、いつも結構バッチリメイクなんだよね。
「が、がっかりさせちゃった……かな」
比留川くんは正真正銘の都会者で、休日は波乗りを楽しむサーファー。
彼に似合うのは隙のない都会女子が、もしくは潮風に髪をなびかせる湘南美人だろう。
海と言ったら穏やかな瀬戸内海しか知らない私に、後者は無理だ。都会者を装うので精一杯。
それも結局“装っている”だけだから、こういうときにぼろが出ちゃうんだけどね……。