同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


「いや……そういうわけじゃない。食べようか。冷めるし」

「う、うん」


なんだったんだろう……気になるけど、これ以上突っ込めない。

気を取り直して、テーブルの上のフォークをつかむ。


「普段から料理するんだ?」

「まあ……時間のある時は」


彼の返事を聞きながら、フォークにくるくる巻き付けたパスタを口に運ぶ。


「……お、美味しい! なんか和風っぽい味がする!」

「ああ、胡麻と大葉のせいかな。料理するっつっても、こういう一皿料理ばっかだよ。麺とかなんとか丼とか」

「それでも男の人でここまでできるってすごいよー。なんかオシャレだし。私は地味な家庭料理しかできないんだ」


両親が忙しい人で、実家にいる頃はほとんど祖母の料理で育った私。

だから、“おばあちゃんの味”を再現するのは得意だけど、こんなおしゃれパスタはどうやって作るのか見当もつかない。


「いいんじゃん? お互い仕事あって、どっちが料理することもあるだろうから、得意分野は違ってた方がバリエーション豊富で」


冷静にフォローしてくれる比留川くんの言葉に納得し、頷く。


「そっか……そうだね!」


私たち、本当に……これから一緒に暮らすんだ。

はじめて一緒に囲んだ食卓で、そんな感慨にしみじみと浸った。



< 41 / 236 >

この作品をシェア

pagetop