同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


無事にマグカップを購入して外に出るとすっかり日が暮れていた。

私たちは近くの洋食屋さんで夕食を済ませて、遅くならないうちに駅に向かった。

改札の前まで送ってくれた比留川くんと、今後の相談をする。


「私、一度自宅に帰って、色々荷物取ってくるね。明日は何時に行ったらいいかな?」

「……別にいつでも。つーか、これ渡しといたほうが楽か」


ポケットに手を入れた彼が、ジャラ、と音を立てながら取り出したのは、いくつかの鍵の束。

そこから器用ににひとつの鍵を取り外すと、私に差し出す。


「俺が寝てても起きてても、いてもいなくても、自由に出入りできるほうがいいだろ」


合鍵……。あそこはこれから私の家にもなるわけだから、これを渡されることはごく自然なこと。

だけどうっかり、よくある恋人同士の甘いやりとりと勘違いしそうになる。


「ありがとう」


マグカップの件といい、比留川くんって意外と女性を喜ばせるツボを心得ているよね。

そっけない言い方の裏に、ちゃんと優しさがあって……。

そんなことを思っているとなんだか彼と別れがたいような気持ちになってきたけれど、昨日からの疲れもあるし、ちゃんと家に帰らなくちゃ。


「じゃあ……明日、また行くね」

「ああ。待ってる」


彼に背を向け、改札を通り抜けながら、私はまたしてもときめいていた。

待ってる、だって……。ああもう、私ってば彼の発する言葉ひとつひとつに翻弄されてる。

逆に、私は少しでも彼の心に何か印象を残せているのだろうか。

……あまり、自信がない。


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