同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「久我さん、その呼び方は……!」
「なあ久我、その“桃太郎”というのはなんなんだ、さっきから」
案の定、さっそく“桃太郎”に突っ込んできたのは社長だ。
内心冷や汗をかきつつ、慌てて取り繕うために口を開くけれど。
「な、なんでもないんです! 私、好物が桃で――」
「いやこいつ、入社したての頃ゴリッゴリの岡山弁でな。どうも出身がそっちらしい。だから“桃太郎”ってわけだ」
私の努力もむなしく、隣の元上司は食い気味に真実を暴露してしまった。
「おかやまべん……?」
きょとんと目を丸くする八重ちゃん。
そりゃそうだろう。私のこと、東京女子代表みたいに思って憧れてくれてたくらいだもんね……。
後輩を欺いていた気まずさからテーブルに肘をつきおでこを手のひらで覆う。
そんな私たちの様子を見て、久我さんはやっと察してくれたらしい。
「悪い。お前もしかして、秘密にしてたのか?」
「……いいんです。自分を偽っていた私が悪いんですから」
私たちのテーブルに、重たい空気が流れる。
そんななか、すでに社長たちが頼んでくれていたらしい料理が運ばれてきた。