同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「……ほら、二人のためにせっかく女性向けのランチを予約したんだから、食べて。難波さんも、顔を上げて、ねっ」
「……はい」
社長に声を掛けられた私は力なく笑ってスプーンを持ち、温かそうに湯気を立てる目の前のラザニアをすくった。
ああ……社長に気を遣わせるなんて、最悪の部下だ。
そして八重ちゃんにとっては、嘘つきで最悪な上司……。
考えれば考えるほど、ずーんと落ち込んでいく。
そんな浮かない気持ちのまま、トマトソースをもそりと口に入れたときだった。
「やっぱり、みちる先輩ってすごい……!」
へ……?
感激したような八重ちゃんの声に顔を上げると、彼女のきらきらした眼差しが私をとらえている。
な、何故に……?
「だって、そんな地方出身者だなんて全然気が付きませんでした! 方言だって全然出ないし、何よりいつもお洒落で洗練された雰囲気だから、東京の人にしか見えませんもん!」
「八重ちゃん……」
グラタンをごくん、とを飲み込んで、彼女を見つめる。
「私も、もっと頑張ってみます。内面も変身できるように!」
にっこり笑った彼女の白い歯が眩しい。
ずっと騙してたこと、怒らないの?
予想外の反応だけど、胸にじわじわ嬉しさがこみ上げる。
「……確かに。ファッションもメイクのセンスも上級者と言っていいくらいだ。今のきみは決して“桃太郎”ではないよ」
「社長まで……すみません、そんな、私を励ますために」
お世辞だろうけれど、今までに何人も素敵な女性を見てきただろう社長のような人にそう言ってもらえると、自信が湧いてくる。