同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「しかし比留川か。いいじゃねぇか。あまり愛想はないが、顔はいいし、仕事もできるみたいだし」
ラザニアを食べ進めながら比留川くんを評価する久我さん。
私はこくりと頷きつつ、静かに彼に頼み込む。
「……素敵すぎて、桃太郎にはもったいないくらいです。だから、彼には絶対に言わないでくださいね? 私の出身地のこと……」
「呆れたな。好きな相手にも言わねぇつもりなのか」
痛いところを突かれて、私は口をとがらせる。
「だって……彼の方も、多少の好意を持ってくれているのはわかるんですけど、それは“今の私”だからですもん。本当は桃太郎なんだって知られたら、幻滅されます」
卑屈に語った私に、久我さんが言い聞かせるように言う。
「それはどっちも本当のお前だろ。……まあ俺は吉沢と違って他人の恋をとやかく言うのは好きじゃねぇから、これ以上は黙るけど。ま、せいぜい頑張れ」
「ありがとうございます……」
彼らしい力の抜けたエールをもらって、いちおう感謝をするけれど、胸の中はモヤモヤとしていた。
……久我さんの言いたいことはわかる。
比留川くんと長く真剣にお付き合いをしていきたいなら、隠し事なんかないほうがいい。
そんなの、わかってるよ……。
でも、自分自身が忘れたいんだもの。
元彼にしつこくすがって、それでもバッサリ振られた“田舎くさい”私のことは。
私は今の私で、新しい恋がしたい。
そして、前を向いて歩きたいの――。