同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
レストランから会社に戻ると、部長に用があるという久我さんも一緒に、八重ちゃんと三人で開発部のオフィスへ入った。
「じゃあまたな。桃太郎」
結局その呼び方を変えようとしない久我さんは、手をひらひらさせて部長のデスクの方へ歩いて行く。
私も気持ちを切り替えて自分のデスクに戻ると、パソコンの画面脇に、青いふせんが一枚貼り付けられていた。
【休憩戻ったら、すぐコーヒー開発に来て 比留川】
「……なんだろう」
ぽつりと呟いて、企画課の向こう側、開発部の一番奥を見る。
開発部の中でコーヒー開発課だけは簡素な扉で仕切られているため、中の様子はわからないけれど……何か、風味に関する問題があったのかもしれない。
相談室のことは八重ちゃんやほかの社員たちに任せ、私はすぐにコーヒー開発課に向かってオフィス内を横切った。
「失礼します」
扉を開けると、漂うコーヒーのいい香りのなかに小さなキッチンと作業台、そして四つのデスクが壁際に並んでいた。
その作業台のところに、比留川くんはいた。
そして、作業台を挟んで彼と難しい顔で何か話しているのは、コーヒー開発課の課長、柏木(かしわぎ)さんだ。