同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


柏木さんはすらりとした長身に迫力のある切れ長の瞳が印象的で、社内の誰よりコーヒーの味に厳しい味覚のスペシャリスト。

比留川くんがそんな彼と話をしているということは……。


「……難波。悪いな、相談室も忙しいのに」


私の姿に気付いた比留川くんが短く謝る。私は作業台に近づいていき、彼に問いかけた。


「ううん、平気。ここにいるってことは、風味関係で何かあったんだよね?」

「ああ。実は、ここ一年“ミストロイヤル”で原因がよくわからない風味異常が発生してるんだ。“不良品”というレベルではない微妙なものだから、コーヒー豆の個体差とか、ほんのわずかな焙煎の違いとか、そういうものだろうということで結論付けてたんだけど……」


比留川くんが視線を落とした作業台に広げられているのは、ここ一年のクレームに関する資料。

それによると、確かにふた月に一件ほど、ミストロイヤルブレンドという製品で風味に関するクレームが入っていた。


一件でもクレームが入ると、私たち開発部は他部署と連携して、その原因を調査することになっている。

相談室の私たちは、お客様の窓口となり、原因がわかってもわからなくてもきちんと結果を報告しなければならない。

今話題にのぼっている製品に関しても、原因がはっきりとは断言できない旨を謝罪する文書を作成し、郵送したのを覚えている。

記憶を思い返している私に、比留川くんは続ける。


「……でも、他にちゃんと原因がある気がするんだ。というのも、ここにまだデータが乗ってない先月はひと月の間に二回もクレームが入ったんだ。ロットはバラバラだから、機械のせいではないと思う。それで、難波にお願いしたいのは……」


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