同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
比留川くんの指示を受け、私は一旦相談室のデスクに戻った。
パソコンのデスクトップに並んだファイルの中から、【クレーム報告 詳細】というアイコンを選んでクリックする。
そして表示された膨大な量のデータは、相談室で受けたクレームを内容ごとに分類し、その情報を事細かに記したものである。
他部署や上司に提出するきちんとした報告書は、その内容をよりわかりやすくまとめ直したものであり、情報量としてはここにあるデータに劣っている。
比留川くんも報告書は当然見たはずだけれど、より細かいデータが欲しいのだろう。
私はパソコンを操作し、ミストロイヤルの風味異常に関するクレームの詳細データを一つ残らずピックアップしていく。
そして、作業の合間に思う。
手紙やメールで受け取ったクレームならともかく、電話口で感情的になっているお客様の言葉をきちんと正しく理解するのはけっこう難しいもので、特に今回のような風味に関することは主観的な指摘も多い。
……どこがどうおかしいのかを伝えてくれる気はなく、ひとこと“マズくて飲めない”と言われて電話をガチャンと切られるとかね。
それでも、私たちの仕事は今後の改善策を探すために根気よくお客様との会話を重ね、できるだけ細かい情報を引き出すこと。
その努力の結晶が、このデータというわけだ。
報告書で事足りる場合が多いから活躍する機会がそれほど多くはないけれど、時々こうして必要になることもあるから侮れない。