同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「……よし」
私は必要な部分をプリントアウトして、再び開発室に戻った。
さきほど書類が載っていた作業台にはペーパードリップの道具が並んでいて、銀のドリップポットを手にした柏木さんが真剣な眼差しでコーヒーを抽出しているところだった。
傍らでそれを見守る比留川くんに、さっそくプリントアウトしてきたデータを渡す。
「比留川くん、これ」
「ありがとう。今、製造日の違うミストロイヤルをいくつか入れてもらってるところだから、難波も一緒に風味チェックしてくれないか?」
「うん、是非。……お役に立てるかどうかはわからないけど」
話している間に柏木さんは抽出を終え、サーバーからカップにコーヒーを注いだ。
そして、私たちにスプーンと水の入ったグラスを渡してくれる。
「味わうのは、スプーンでひと口だけ、空気を一緒に口に含むようにする。それから次のコーヒーに移るときには、一度水を飲む。……注意点はそれくらいだ」
柏木さんに淡々と説明を受け、私はごくりと唾をのむ。
やってみたかった仕事とはいえ、予想以上に集中力を必要としそうで緊張してしまう。
そんな私の脇で、比留川くんはさっそく風味チェックを始めている。
私も緊張している場合じゃないよね……。
意を決して、作業台に並んだカップの中から一つを選び、湯気の立つ褐色の液体をスプーンですくう。