同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
柏木さんに言われたように空気と一緒に舌の上で味わい、鼻から抜けていく香りにも神経を研ぎ澄ませる。
そうして三人で風味チェックを繰り返し、それぞれ感じたことを紙に書き出す。
そして、私の持ってきたデータと照らし合わせながら意見交換するうちに、なんとなく問題となる風味が分かってきた。
「ミストロイヤルの売りは、深いコクと苦みがありながら、後味がスッキリしているところにあるが……クレームの集中している製造日のものは、わずかに雑味が残る。……もちろん、不良品とするには微妙すぎる違いだが……製造日当日のチェックで気が付けなかったのは問題だな。……申し訳ない、これはうちのミスだ」
苦々しい表情で謝る柏木さん。
私はそこまで細かい風味の違いまではわからなかったし、何と言っていいのかわからない。
けれど比留川くんの方は、すぐに次のステップへと進むべく柏木さんに尋ねる。
「雑味の原因はなんなんでしょうか」
「そうだな……いろいろ考えられるとは思うが――」
柏木さんが顎に手を当てた瞬間、開発室のデスクの上にある電話が鳴った。
彼はすぐに応対し、電話の相手としばらくやり取りした後すまなそうにこちらに戻ってきた。
その様子から察するに、どうやら急きょ別の仕事が入ったらしい。