同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
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「じゃあ先輩、お先に失礼します」
「うん、お疲れさまー」
午後五時。定時を迎えて次々帰っていく同僚たちを見送ってから、自分も帰り支度をしてデスクから立ち上がる。
今日は特に残っている仕事もないし、早く帰ろう……そう思っても、やっぱり気になってしまうのは比留川くんのこと。
彼との関係は秘密だから一緒に帰るつもりはないけど、周りにばれないようにひと言くらい何か声をかけたい。“先に帰ってるね”とか“ご飯用意しとくね”とか。
……彼女でもないのにうざいかな?
思い悩みながら企画課の方を覗くと、そこに比留川くんの姿はなかった。
なんだ……もう帰ったのかな。
なんだか拍子抜けしたような気分になり、私も早く家に帰ることにした。
比留川くんのマンションは、会社の最寄り駅から地下鉄を二本乗り継いで、徒歩五分のところにある。
今まで住んでいた二階建てアパートよりずっとお洒落で都会的な外観をした十階建てマンションにはまだ“我が家”という感じが全くなく、緊張しながら部屋の鍵を開ける。
えーと、お邪魔します……じゃなくて。
「ただいま……」
って、あれ? ……比留川くん、まだ帰ってないみたい。
薄暗い廊下の電気を点けて、リビングダイニングに入っていく。
「……いない」
オフィスにはいなかったけど、たまたま席を外していただけで、残業してるのかな。