ただあの子になりたくて
「私に……、私に聞かないでよ」
自分でも驚くほど低い声だった。
鼻の奥がつんと痛む。
「やめてよ」
私は拓斗を鋭く睨み、大声をあげた。
「私が二人のことなんて、知るわけないじゃん!」
私の目に映る拓斗の自慢の顔が、一気に歪む。
「へっ……、お前、何で泣いてんだよ……?」
私は目を丸くして、ぼうっと立ち尽くした。
ぼたりと、胸の赤いリボンにできた大きな水玉。
一雫落ちれば、次々に頬の上を流れだす。