ただあの子になりたくて
私はリボンからぎこちなく手を放し、平然を装って下駄箱の中のスニーカーと上履きを入れ替える。
「なんだとはなんだよ、人気者の拓斗様なんだからな。失礼な」
拓斗は意外にもきれいな切れ長の瞳を見開き、余裕ぶって髪をかきあげる。
「俺、隣のクラスの女子に呼ばれちゃって帰ってきたらいねぇんだもん」
でも、そんな彼も不安げに視線をさまよわせた。
「さっきメッセ送ったけど、2人とも返事こねぇし、既読すらつかねぇし」
なぜか息苦しく胸がつかえる。
手が勝手にスカートの裾を握りしめる。
「椿と蒼介、一緒にいんのかな?」
その時、靴に差し入れた足が、踵を深く踏みつぶした。