ただあの子になりたくて
まばらにいた生徒たちのざわめきがこちらに向かってくる。
私は小さく歯ぎしりする。
両方の踵を無理やり吐きつぶして、当てつけに拓斗を突き飛ばした。
「はっ? おい、なんなんだよ! てか、俺のスマホぉ!」
衝撃で手からすっぽ抜けたスマホが、床で盛大な音を立てて踊る。
青ざめてスマホに駆け寄る拓斗。
私は即座に背を向けて、強い声で言い放った。
「だから放って置いて! どうせ拓斗だって同じ目見るんだから」
もう、何人かの生徒の視線が背中に刺さっていた。
だから私は流れる涙に手を伸ばすのを我慢して、小走りに歩き出す。
こんな自分、もういらない。そう思えるくらい、惨めだった。
校舎から出て、一気に体を刺す夕方の日差しが、生まれて初めて憎らしかった。