ただあの子になりたくて


私はつばをごくりと飲み込んだ。

ゆっくりと角度を変えて目の前をおりてゆく、境界線となる棒。

道を赤々とした血の色に染め上げる、点滅を繰り返すランプ。

狂い鳴る警告音が、途方もなく立ち尽くす私の頭の中を繰り返し強く叩く。

ふと思った。否、そんなことはない。ずっと考えてここへやってきた。

私が、この世界から消えることを。

強烈な赤い光を睨み返して、私は思う。

私にはもう、本当になにもないと。

この赤いランプとともに脳内で明滅する、今日の夕暮れの記憶。

髪をなびかせ飛び込んだ泣きぼくろの美しい女の子。


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