ただあの子になりたくて
私はどうしようもない自分の手を痛いほどに握りしめた。
私は本当に情けない人間だ。
自分を殺して、今度は椿のことまで殺そうとしている。
今もこうして何もできないまま手をこまねいて、ずぶ濡れのまま、逃げるようにあてもなく歩いてきた。
何からも逃げられるはずがないのに。
どこへ行っても、誰も、何も、解決などしてくれないのに。
私は決して自分の体ではない、冷え切った椿の体を抱きしめた。
そして、目の前にそびえたつものを、私はおずおずと仰ぎ見た。
まわりと勝ることも劣ることもしない、ごく平凡なこぢんまりとした闇に包まれる二階家。
でも、ここだけははっきりと違う。