ただあの子になりたくて


にじみ出る空気だけでわかる。

この前に差し掛かるだけで、私は決まって息苦しくなる。

もう久しく吸っていなかった嫌な重苦しい空気。

まわりと同じ化粧をして白々しく成り済ました、仮面の家。

自分を自分で疑う。

自分の足が憎らしい。

何でよりによって、私の足は勝手にこの道をたどってしまったのだろう。

私は帰ってきてしまった、とうに捨てたはずの長年暮らした場所に。

あの日おわれた、本当の自分の家に。

家は本当に闇に包まれていた。


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