ただあの子になりたくて


「あんたはあたしの汚い部分、全部背負ってくれてたでしょ。あんただけにそんな顔させたままおいていけない」

もう一人の私は、私の方に顔だけを向けて、うざいと言いたげに眉をひそめている。

だから、そんなもう一人の私の前にしゃがみこんで語り掛ける。

「それにあんたは言った。自殺した奴に自分を受け入れることなんてできないって」

私はしたり顔を決め込んで、ポンと強く自分自身の胸を叩く。

「でも、私はちゃんと自分に戻った」

目の前の自分が、目を丸く大きく開きだす。

「私はきっと本当は、自分を受け入れたくてあんなことをしたんだよ」

あまりにも自信満々な私に、目の前の私が瞳を震えさせる。

そんな私に私はありったけ笑いかける。

「だから最期に、あんたのことも受け入れなきゃ本当の私にはなれないでしょ? もう私は大丈夫だから。私はあんたを受け入れたい」


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