ただあの子になりたくて


私は、目の前の独りぼっちの私に、両腕を広く大きく広げる。

「おいで」

私は心から、そこにいる私に呼びかけた。

もう一人の私は下唇をきつく噛んでいる。

膝小僧の上で小さな手が震えている。

気弱な目が、おどおどと私を見ようとこちらを向いている。

私は、そんな私に頷く。

「怖がらないで。私と一緒に行ってよ、ね」

目の前の自分が瞳を潤ませて立ち上がる。


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