ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
子供みたいに頭の中で駄々をこねた。
皆に笑われると思うから顔すら上げれない。


「キャッワイー!」


はしゃいだのは誰か。
さっきのピアスの人?


「大輔の女にしとくのなんて勿体ね。俺の女になんなよ」


そう言って寄ってくるのは金髪の男。


「ダメ。寄るな」


断ってる声が嬉しそうなんだけど。



(あれ……?)


いつの間にか皆の輪の中にいる。
取り囲まれてるのに、さっきの緊張感がない。


(……なんで?)


チラ、チラ…と目を向ける。
確かに目線は向けられてるのに、これまでとは何かが違う。


「ケイちゃん?とか言ったっけ。ヨロシクな」


ピアス男がウインクした。


「オレ、呼び捨てしてもいい?」


短髪を尖らせた男性が笑う。


「アホ。そんなの大が許すワケねーだろ!」


別の男性がツッコミを入れる。

話がどんどん変わってく。
思ってもない方向へコロコロと……。



(へ……変なの……)


見た目は怖そうだったりハデだったりする人達なのに、私が吃ったことなんかすっかり忘れてる。


(これが…大輔さんの仲間……?)


オフィスにいる人達とは全然別の人種。
同じ世界で生きてるのに、この温度差は何?



呆気にとられたまま眺めてしまった。
ワイワイと盛り上がってる人達の中に、唯一私を睨んでる人がいることも知らないで。


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