ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
「おーい!飯だぞー!」


カウンター越しに羅門さんが叫んだ。
待ってました…とばかりに、皆がそっちへなだれ込む。



「今日なんだー?」

「げっ!またナポリタン!」

「大した経費かけれねぇんだから当たり前だろ!嫌なら自分とこの檀家に『金出せ』とでも言うか?」

「冗談じゃねぇ!そんなことしたらバチが当たる!」

「なまくら坊主のくせにバチだってさ!古くさぁ!」

「ウルサイ!お前ら全員地獄に落ちろ!落ちても経なんて上げてやんねーぞ!」



大人だよね…と思う。
ハデでヤンキーっぽい人達だけど、中身はまるで子供。


(何……このギャップだらけの人達……)


呆れるを通り越してしまった。
私はただぼうっとして、目の前に映し出される光景を眺めてるだけになった。



「騒がしい奴らだろ。でも、いいヤツばっかだから」


ボンヤリとしてたからだろうか、轟さんにそう言われた。
そんな風に言われたら、確かにそんな気もしてくる。


「うん……」


間抜けな顔してたんだろうか。
彼は唇の端を持ち上げ、今日初めて見るような笑みを浮かべた。


ドキン…と胸の中に滑り込まれたような気がする。

これまで以上に轟さんが近い……?



「大ちゃん何食べんの?」


トレイの上にお皿を乗せた「すみか」という女性がやって来た。


「早く取らないと無くなっちゃうよ」


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