ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
「えっ、本当に!?」


大袈裟に驚かれた。

 
「えっ……と、あの……」


こういう時もマトモに話せないんだよね、私は。



「ホントだよ」


部屋の出入り口を開けて轟さんが来る。
乱れた髪の毛もセットして、きちんと後ろへ流されてる。



「ようやく落ち着く先見つけたのか」


椅子を引く人を眺めながら続けた。


「いろんなのに手出してきたけど、見つけたんならまあいい」


「ケイが聞いてるから」


真綾が口を挟んだ。


「あ…そうか」

「一言余計なんだよ」


言い返した人は睨んだ。
睨まれた社長は笑ってごまかし、朝食の時間は始まった。


和定食を食べながら異動についての話を聞いた。
社長は私に自社製品のデザインも考えて欲しいと思ってるようだった。


「美大でデザインを専攻してるだろ。検品課よりももっと幅の広い仕事ができると思うんだ」


「わ…私は、そんなこと……」


できません…という言葉を言うよりも先に社長が声を発した。


「やる前から『できない』は『逃げ』でしかないよ」


ズキン…とくる重い言葉に、胸の奥が震えた。


「それに僕は、できない者を入社させたりはしない」


完璧な社長タイプなんだと言ってた。
隙の無いところが前面に押し出されてる。


「君は入社試面接の時に言ったよね。『誰にでも手にできる玩具を扱ってみたい』と」


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