ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
あんな辿々しい発言を覚えていてくれたんだ。


「そういう人にこそ携わって欲しい部署なんだよ。商品開発部は」


自信を持て…とは言わんばかり。
それは何よりも嬉しい響きだけど……。



「兄貴はカッコ良すぎなんだよな」


轟さんは僻むように言った。


「でも、その先見の明を信じてもいいと思うぞ」


付け加えられた言葉に真綾も一緒になって頷く。

私は躊躇いながらも、これが最後のチャンスのような気がしてきた。



「が……頑張って……みます……」


明日から。ううん、今日からもう一度。



「頑張って蛍。私も聖も応援してる!」


「う、うん…。ありがとう……」


ございますを付けるべきだろうか。真綾はこの家の若奥様だし……。




「話はもういいか?」


食べ終わった轟さんが立ち上がった。


「俺達、これから用があるんだけど」


側に来て手を取る。


「あ…あの……」


まさか、ホントに昨夜の続きをするつもり?
真綾達がいても平気なわけ!?


「何だか知らないけど乃坂さんは怯えてるぞ」


可笑しそうに笑いながら食後のコーヒーを啜る社長。


「私達に遠慮なさらず、どうぞどうぞ」


ま、真綾まで…そんな……!



「それじゃ行こうか」


(や、ヤダァ!)


抵抗虚しく連れ出された。
轟さんは部屋に向かわず、玄関先へと歩きだしてる。


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