ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
いきなり現実突きつけられた気分。
おとぎ話の世界じゃ至れり尽くせりなのに。



「行くぞ」


偉そうにするな。


「はは、はいっ!」


あーあ、言いなり。


谷口の分もゲートでチケットを渡して半券戻してもらう。


「一旦、外へ出られても半券があれば再入場できますから」


(へぇー、そうなのか)



納得してる間にヤツはどんどん先へ進む。



(この男、待てないの!?仮にもお金を払ってるのは私なのよ!?)


ぶちぶち言いたくなるのを抑えて後を追うと、進路方向にエスカレーターが見えてきた。



「これを上がればいいんだな」


呟きレールの上に足を乗せる。


「ほら来い」


手を出して引っ張る。
トン…とレールの上に足が乗ると、ニッと笑う口元。


一瞬シンデレラみたいな気分に陥った。
男性に手を添えられて階段を上るなんて、私には経験ないから。



「暗いな」


海の底に潜っていくイメージで作られたエスカレーターの先を見て呟く。


「サングラス外せばいいでしょう」


館内はどこも暗いし。


「そうだな」


改めて思ったみたいに外してる。




(…ふぅん。こんな顔だったんだ)


暗いからはっきりとは確認できないけど、谷口の顔はまあまあのイケメンだった。


まつ毛の長い目が大きくて、二重のスジはやっぱり深くてくっきりとしてる。
鼻筋は通ってて小鼻もそんなに広がってない。

< 48 / 209 >

この作品をシェア

pagetop