ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
(イルカをここまで心配するなんて変な人)


そう言えば、金魚も追いすぎてたら他のにしろと言われた。
…と言うことは、基本的には優しい人ってこと?


(じゃあ、今日はひょっとして私を慰めるためにここへ誘った?)


先週食べきれないほど食べさせてもらったのもそう?

私を気に入ったと言ったのも、単純に気遣いから?



(そう思うと惨めだな)


知らない人から慰められるなんてね。


気分が落ち込んでしまった。
せっかく少し楽しく感じてたのに。



「ホタル!」


谷口の声が聞こえ顔を上げた。同時に胸の中に包み込まれる。


(えっ!?)


何!?
どうしたの!?



キャーと叫び声が上がるのが聞こえた。
何事?と思ってたらビシャッ!という水音とともに足先が濡れた。



(ええーっ!?)


呆然としてる側から谷口の身体が離れていく。


「大丈夫か?」


……って、あんたは濡れてるじゃん!


「えっ、な、なに…」


があった?


「イルカがジャンプしながら泳ぐから前の席の方は水飛沫に気をつけてと言われたけど……聞いてなかったのか?」


それで?
あんたが濡れてるわけは……


「か、庇ってくれたの?」


さっきの抱きつきはそういうこと!?


「庇ってやるって言ったから」


「だからって……」


まさか、ホントにするとは。


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