ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
ガツン!と頭をハンマーで叩かれたかのような痛みが走った。

郁也は自分から私に「付き合おう」と誘いつつ、他の子の告白も受けたのか。



「さっきの子、江東 梨乃(えとう りの)って言うんだ。デパートの玩具売り場に勤めるOLでね……」


スラスラと彼女の紹介を始める。




「………ふざけんな」


なんで無神経に紹介できるの!?



「えっ?何?」


デレっとした顔を見てるのもイヤだ。



「…ふざけんなっつったの!バカにするにも程があるでしょ!!」


人がどれだけ準備に時間をかけたと思ってるんだ。
朝からずっと自分に磨きをかけて、ドキドキしながらここへ来たというのに。


「キレられても困るよ。俺は最初から梨乃とここへ来る約束をしてたのに、ケイちゃんがそれをぶち壊したんじゃないか」


「なっ……」


言うに事欠いてそれ!?


「彼氏いない子に少しだけいい思いさせてやろうかと思ってたのにやめる。やっぱ梨乃と回るわ」


ズボンのポケットからスマホを取り出した郁也は、画面をタップしながら呟いた。


「似合いもしないのにド派手な浴衣着てさ。思いきりドン引きだよ」


鏡見てから来なよ…と言いながら電話に出た子に囁いた。


「梨乃〜?俺だけど……」


甘える声に虫唾が走った。
ぎゅっと手を握り潰し、堪忍袋の緒が切れてしまった。


「ふっざけんなっ!バカッ!!」


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