ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
「お、おお、お願いしますっ!」


また吃ってしまった。
二人はニッコリと微笑んで、嬉しそうに顔を寄せてきた。


「任せて任せて♡」

「どんな浴衣着たい!?」


涙が出そうなくらいホッとする。
この二人に出会えて、私はホントに幸せ者だ。


シェイクを飲み終えて近場にあるデパートの着物売り場へ三人で向かった。
いろんな色柄の中から選んだ浴衣は、二人が私に一番似合うと言ったものだった。



「今度はあの下駄にも合うよ」


真綾が笑って言う。


「怒っても投げ付けちゃダメよ」


聖が面白そうに諭した。


「うん。もうしないよ。そんなこと」


期待に胸が膨らんでく。
自分らしい浴衣が着れることがこんなに嬉しいなんて。



(谷口は何て言うだろう……)


そもそも、私だと気づいてくれる?

気づいたら何て言う?

何を言ってもいいけど、ショックだけは受けないで欲しい。



「ほら、次はメイク行くよ」

「1階にレッツゴー!」



化粧品売り場で燥ぎながらルージュやグロスを選んだ。
売り場のお姉さんの冷めた目線も気にせず、二人はいつも以上に気合を入れてくれた。


「レッドだけはやめよう。浴衣にも蛍にも合わない」

「そうなるとオレンジもナシね」


楽しそうに言い合う二人に感謝した。

4年前の入社式の日も、同じように二人が私の隣にいてくれたことを思い出した。


< 94 / 209 >

この作品をシェア

pagetop