愛と音の花束を

駅の改札を出て私が立ち止まると、後ろを歩いていた椎名は並んで立ち止まった。

「私、あっちの駐車場」

「俺はこっち。今日は楽しかった」

椎名の言葉に、慌てて笑顔を作る。

「こちらこそ、楽しかった。身体も楽になったし。ありがとう」

「よかった。じゃあ明日、予約時間にお待ちしてます。気をつけて帰って」

彼は笑って手を振った。


私だけに向けられた笑顔。あたたかな雰囲気。

彼の存在全体に、心が吸い寄せられる。

あまりの幸福感に、身体の芯がぐらりと揺れた気さえした。


慌ててお辞儀をしてから、背を向ける。


……ああ、もう、まいったな。

認めざるを得ない。


このコントロールできない感情の名前、

まぎれもなく、

–––––––“恋”だ。





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