愛と音の花束を
□

定演が終わって、次の土曜日の午後。
店に私ひとりになった時間。

三神君がやってきた。

「こんにちは」

「いらっしゃい、ま、せ……」

挨拶がしぼんでしまったのは、彼の後ろに女性がいたからだ。

彼が女性を連れてくるなんて! まさか!

賢そうな美人。

私の一瞬驚いた顔を見て、特別なものを読み取ったのだろう。彼女は、ペコリとお辞儀をしてくれた。

決まりだ。

この人が。

私は彼女に会釈を返し、三神君に向かって、

「コンマス、その方が、噂の彼女さんですか」

と言ってやった。“噂の”に若干のアクセントをつけて。

彼女がチラリと三神君を見やる。結構視線が鋭い。

三神君は気にせず、「そうです」としれっと答えた。

へぇ。なかなか面白い組み合わせ。

「お墓参り用の花束、お願いします」と三神君。

「かしこまりました。ご予算は?」

彼女が一緒ということは、いつもより奮発するつもりなのかなと思ってきいてみる。

彼女は外に出て行った。
重ね重ね賢い子。

三神君はやはりワンランク上の金額を提示してきた。


花束を作りながら、三神君に話しかける。

「素敵な彼女さんで、ご両親も喜んでるでしょうね」

「今日は結婚の報告をしてきます」

わぁ! 結婚!

「それはおめでとうございます。……でも、ご両親より前に私なんかにバラしてますけど」

「両親には、まずは仏壇で報告してますので。生きてる人への報告は、……あぁすみません、最初は背中を押してくれた僕の師匠にしてしまいました。永野さんは二番目です」

「……光栄です」

よかった。

幸せそうな彼を見て、本当によかったと思う。

三神さん、おめでとうございます。
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