愛と音の花束を

サン=サーンス交響曲第3番は割とノーマルなので、ボウイングではそれほど揉めずに、曲合わせに集中できた。


第1楽章第2部、ファーストとセカンドが12小節に渡ってかけあう部分がある。
他の楽器は入らず、ヴァイオリンのみで、美しいフレーズを奏でる『おいしい』部分。

お互いの音を聴きながら、アンサンブルしていくのは、まさに至福だ。

コンマスが、私の音を聴いてくれてる。
しっかり受け止めてくれて、返してくれる。
私という人間をまるごと受け入れてくれているかのような安心感。


ここからポコクレッシェンド。
少しずつ盛り上げていく。

彼はちゃんと私の手をとって一緒に昇ってくれる(もちろん比喩的にだけど、そんな気持ちになる)。

持ちうる全ての神経を研ぎ澄ませ、集中して身体をコントロールし、楽器を弾き続ける。

……でないと、ドキドキして、ミスしてしまいそうになるのだ。


頂点の後、一気にピアニッシモに落とす。

ここでも彼はちゃんと寄り添い、受け止めてくれるので、ほっとする。

フレーズの最後は目を合わせて、一緒に終える。


彼と楽器を弾いていて、よく思うことがある。

あと10歳若かったら、勘違いして、彼を好きになっていただろうな、と。

それくらい、彼とアンサンブルするというのは魅惑的な体験なのだ。

楽器が“そこそこ上手い”レベルで音楽の教養もそれほどないこの私が、こうして彼レベルの人間と一対一で弾けるなんて、日頃のパートリーダーとしての雑務に対するご褒美だと勝手に考えている。

これでまた半年間頑張れると思っているなんて、誰も知らないだろう。




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