愛と音の花束を



4本の弦を鳴らし終えた椎名氏が、私に気づき、こちらを振り返った。

「もう少ししたらコンマスと団長が来ますので、それまで練習していただいて構いませんよ」

私が言うと、彼はニコっと笑ってうなづき、窓に向き直り、左手で弦を押さえる基礎練を始めた。

音程は時折あやしいものの、気づいて直すことはできるようで、一安心。(自分の音程が悪いことに気づかない人もたまにいるので。……自分も気をつけよう。)


私は椅子に座り、彼を斜め後ろから眺める。

……ん?
何だろう、この違和感。
ビジュアル的に、何だかおかしい。
構えや弾き方は問題ないけど……。

………………ああそうか。

身体が大きいからヴァイオリンが小さく見えるうえ、手がものすごく大きいから、そのバランスが見慣れないんだ。大人が分数サイズの楽器弾いてるみたい。

彼の手は、手の平も大きければ、指もゴツゴツしていて長い。
人差し指と小指でオクターブをとるのは楽そうだけど、ハイポジションの速いパッセージになるとつらいかも。


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