桜の花びら、舞い降りた

それでも、つながれた手から圭吾さんの体温が徐々に伝わってきて、胸がジンと熱くなる。


「……亜子ちゃん」

「なぁに?」


圭吾さんの顔も見ずに返事をする。
心が鉛を呑み込んでしまったかのように重い。
もしかしたらその重りで、このまま雪深くまで潜ってしまうんじゃないかと思うほどだった。


「亜子ちゃん、顔上げて」


圭吾さんを元の世界に戻してあげたい気持ちと、このまま一緒にいたい気持ち。
矛盾は膨れるばかりで、頭も心も破裂しそう。


「亜子ちゃん?」


もう一度呼びかけられ、さすがに顔を上げずにはいられなくなる。
息を大きく吸い込むと、私は今できる精一杯の笑顔で圭吾さんの顔を見上げた。
涙を堪えているせいで変な顔になっているのは想像がついた。

圭吾さんの優しい目が私を見つめる。

雪が一段と激しくなった。
大きなぼた雪が、ただ静かに私たちへと降り注ぐ。
圭吾さんの頭にもどんどん積もるいっぽうだ。

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