桜の花びら、舞い降りた
◇◇◇
圭吾さんが戻る日の朝。
俊さんを含めた私たち三人は、あの橋へ向かって歩いていた。
三人とも無言のまま、足取りは重かった。
乾いた空気なのに、私たちの周りだけが重さを感じる。
天気予報の通り、昨日はあれから雪は止み、午後は嘘のようなポカポカ陽気になった。
降り積もった雪は容赦なく太陽の光を浴びて、あっという間に水へと変えていった。
そして、今朝はまた真冬並みの寒さに逆戻り。
溶け残った雪が道路脇で再び凍りついている。
この気温差なら、きっとあの橋周辺には霧が出ているだろう。
圭吾さんは予定通り、過去へ帰る。
白い息を吐きながら歩くと、橋が近づいてきた。
ここから見る限り、霧は出ていない。
「出てないな」
俊さんがおかしいなという風にポツリと呟いた。
あの夢に出てきた霧は、隣に立っていても顔が霞むほどの濃い霧だった。
確か、橋の上にまで立ち込めていたように覚えているけれど……。
私たちはそのまま橋の中央に向かって歩き続けた。
「なんだろうね。今日は出ないのかな」