桜の花びら、舞い降りた
この期に及んで、まだ諦めきれないとは……。
圭吾さんが欄干から少し離れて私たちに向き直った。
「亜子ちゃん、俊さん……なんて言ったらいいのか……」
俊さんも私も、なにも言えずにただ首を小さく横に振った。
私は溢れそうになる涙をこらえるのに必死だった。
圭吾さんが俊さんに右手を差し出し、ふたりは握手を交わした。
「俊さん、本当にありがとうございました。俊さんがいなかったらどうなっていたかわかりせん」
俊さんが圭吾さんの右手を引き寄せて肩を抱く。
圭吾さんの言う通りだ。
俊さんがいなかったら、圭吾さんはどうなっていたんだろう。
私ひとりだったら、ここまで調べて圭吾さんを過去に帰してあげることなんてできなかったはず。
「圭吾くん……」
俊さんも必死に涙をこらえているようだ。
肩が小刻みに震えている。
俊さんが静かに離れると、圭吾さんは私に向き直った。