桜の花びら、舞い降りた
「それを言うなら、俺よりうんと年上だぞ」
香織の言葉を俊さんが打ち消す。
絵を描いているだけじゃなく、ちゃっかり私たちの会話も聞いているのだ。
なんのことかと香織とふたりでポカンとしたところで、圭吾さんは「あ、そっか」と柔らかく笑った。
その笑顔を見て不思議な気分になる。
なぜか懐かしく感じたのだ。
昨日知り合ったばかりなのに変なの。
ちょっとした記憶の誤作動だろうけど。
「今が二〇一七年なら、俺は七十二歳だ」
「――そっか!」
香織と私はパッと顔を見合わせた。
五十五歳も年上だ。
なんだか変な感じ。
「橋で初めて見かけたとき、亜子のことを別の人と勘違いしましたよね?」
香織が続けざまに質問をする。
そういえば、そうだった。
「誰と思ったんですか?」
「……妹」
圭吾さんは私を見て、「あのときはごめん」と謝った。