桜の花びら、舞い降りた
見てみれば、それは丸高美術館と金色の刻印がされた手のひらサイズの黒い手帳だった。
二〇一七年とも書かれている。
美術館でもらった今年の手帳みたいだ。
俊さんは手帳にわざわざ予定を書き込むようなタイプには見えない。
確かに、彼には必要ないだろう。
「今日も美由紀さんを探しに行ったの?」
私の質問に、圭吾さんは力なく首を横に振った。
そこには半分諦めのような色が滲んでいた。
「街はすっかり景色が変わってて、どこをどう探したらいいのかわからないしね。それに、美由紀はもしかしたらこっちには来ていないのかもしれない」
ため息交じりに言う。
圭吾さんの言うとおりかもしれない。
もしも一緒にこちらの世界に来てしまったのなら、圭吾さんとあの橋の上にいたはず。
例えば、ふたり一緒に気を失っていて、美由紀さんが先に意識が戻ったのだとしたら、圭吾さんのそばから離れないだろう。
そうなると、こちらには圭吾さんひとりだけがどういうわけか飛ばされてしまったのだと考えたほうが良さそうだ。
だとしたら、美由紀さんはあっちの世界で川の中に……?
それだけはどうしても考えたくなくて、私は目をギュッと閉じた。
離れ離れになってしまったのだとしても、どうか美由紀さんも無事でいてほしい。