桜の花びら、舞い降りた

どこかに売りにでも行ったんだろうか。
今さらながら、俊さんがなにで生計を立てているのか私は知らない。
普通に働いている様子はないし、資産があるようにも見えない。
それは単に、身なりが特別高価そうに見えないからというだけにほかならないけれど。
ただ絵を描いているだけで生活していけるものなのか。
考えてみれば、不審な人だ。

マフラーを外してコートを脱ぎ、入ってすぐにあるフックに掛ける。
圭吾さんの斜め前の椅子に座り、バッグを膝の上に置いた。


「なにを書いてたの?」


圭吾さんの手元には、私が入って来たときに閉じられた手帳のようなものがあった。


「あ、これ? 日記みたいなもの」

「日記? 圭吾さん、いつも書いてるの?」

「うん、五年くらいになるかな」

「五年も!?」


それはすごい。
五年日記とか十年日記とかいうのが流行ったことがあって、私も挑戦したことはあったけど、結局一週間と続かなかった。
三日坊主の典型だ。


「日課みたいになってるから、書かないとなんだか落ち着かなくて。もらったけど使わないからって、俊さんがくれたんだ」

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